ツンデレ系百合ちょろインの権化
2020年に放送されたTVアニメのなかで、マシマヒメコ、サーシャ・ネクロン、白井夢結の3人を演じた 夏吉ゆうこ さんがとても良かった。 どのアニメもアニメ作品としての出来がとても良かったこともあるけれど、その一端を夏吉ゆうこさんが担っていたのは間違いないと思う。 ヒメコは同じバンドの仲間であるほわんに、サーシャは双子の妹であるミーシャに、夢結様はシルトである梨璃に向けるその感情の演技と声に心惹かれた。 この3人に共通するのはツンデレ系百合ちょろヒロインだということ。
マシマヒメコ / SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!
その髪のボリュームはなんなんだというツッコミはとりあえず置いておくとして、天才的な音楽の才能を持ちながら孤独だったマシマヒメコ。
おそらくその性格もあってか、バンドという表現形態を取る以上中々思うように進まずに殻にこもってしまっていたのだと思う。
人に裏切られることを極度に恐れている彼女は、行く場所がないほわんをほっとけずに家に住まわせたり優しさ(とちょろさ)の片鱗は随所に見せているも、
外圧や変化(REIJINGSIGNAL)に対して過敏に反応して、また人を遠ざけるような態度をとってしまう。
第6話「ヒロメネス」。ヒロメネスはSHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!のOP曲のタイトルでもある。
ヒメコとほわんのわだかまりが解けたこの回の最後のシーンでバンド名「Mashumairesh!!」が決定する。
話数は中盤ながら始まりの歌であるOPのタイトルを冠してそのバンドの始まりを表現していると考えるととても良い構成に見える。
最後にましゅまいれっしゅ!!随一の「キミのラプソディー」がインサートされてEDへとつながる。
もう全てが完璧としか言いようがない。
ベストシーンは海辺で仲直りした時のイチャつきで、雰囲気がほんと見ているこっちが目を覆いたくなるような幸せなやり取りが繰り広げられている。
ベストセリフその時にほわんに「ねえ歌って」と言われた後の「一緒なら、いいよ」。
ただその後歌った、にんじんとだいこんが仲良しっていうあの歌はなんなんだ。
サーシャ・ネクロン / 魔王学院の不適合者〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜
サーシャはもうひと目見ただけでちょろそうという雰囲気がビンビンに伝わってくる。
魔王学院の不適合者については主人公アノス・ヴォルディゴードの強烈で強烈すぎる強烈なキャラが強すぎるのだが、
サーシャとミーシャの姉妹に出会うことで少なからず影響を受けて変わっている。
アノスに思いを寄せる素振りはあるんだが、最初のうちは結局サーシャは結局ミーシャをどう救うかとしか考えていない。
第4話「十五の誕生日」。十五歳の誕生日に消滅してしまうミーシャを助けるために作戦を決行するサーシャ。
なんでまあそういうやり方しかできないんだ。ツンデレ系百合ちょろインは全て自分だけで完結させようとして本当に不器用。
ベストセリフは「あなたが行使するのはゼクシズだけでいいわ」。
なんとしてでも妹を救おうとするために立てた作戦が(一応)サーシャの中では完結する道筋が見えた時、
その言葉には妹を救えるという安堵と自分は消滅するという諦めを同時にはらんでいる脱力感が乗った良いセリフだった。
ベストシーンは最後、妙にアノスに改まった態度を「俺にキスをした時の勢いはどうした」とからかわれた後に放った「違うわ、友達、友達のキスだから」と必死にフォローするやり取り。
ねえ、友達のキスって何?
魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~
- メディア: Prime Video
白井夢結 / アサルトリリィ BOUQUET
個人的に2020年ベストアニメであるアサルトリリィ。
その中でも群を抜いている第五話「ヒスイカズラ」、通称ラムネ回。これがもう今まで見てきたアニメの中でも確実に上位に食い込む一話。
ふとしたきっかけで自分のシルトである一柳梨璃の誕生日が明日であることを知った夢結様は、梨璃の好物であるラムネを手に入れるために電車に揺られて遠出する。
あの白井夢結様が人のために何かをしようとしていること、その不器用さが非常に愛おしい。梨璃の地元まで足を運んで手に入れたラムネも、帰路で会った喉が渇いた子供にあげてしまう。
本気でこの子供は……お前夢結様がどれだけの気持ちでこのラムネを買ってきたかわかるのか?って説教したくなった。
そして最後のダメ押しで最寄り駅から学院への道すがらラムネを売っている自販機を見つけてしまう。夢結様はもう魂が抜けて空になってしまう。
ベストシーンは、もう最後の一連のやり取り全部なんだけど、梨璃のために休日遠出してまで手に入れたラムネが学院の近所で売っている事実を知って中々立ち直れない夢結様が、
自身のシュッツエンゲルとしての立場や、更には人間としても大したことはないわよと自己否定の負のスパイラルに突入してしまった。それを見かねた梨璃がお姉さまを私にくださいとハグを求めた後に、
上半身を腰から45度だけ倒して両手をぶらんと前に垂らしたなんとも言えない表情と格好で「どうぞ」と言ったシーン。
そこからはもう見てくれ。決してそういうシーンではないんだかただただ二人のやり取りの一挙手一投足が美しい。
「私、汗かいてるわよ」「ぶどう畑の匂いがします」はあ~~~。
ベストセリフは、場面変わってその一連のやり取りを終えた夜、ルームメイトに梨璃のレアスキルがカリスマである可能性を告げられた後の一言。
「そんなふうに考えるの、嬉しくないわね」はい。
梨璃を思う気持ちは自発的なものではないのか、色々な奥行きが乗っかったセリフがゾクゾクする。
それまで隣りにいるルームメイトの秦祀に顔を合わせて会話していた中で、そのセリフを言う前に顔を正面に向き直す。
困っている時ほど人と目を合わせないという夢結様の癖は、一匹狼の状態でおそらく困難に退治した時の自分との対話が露わになった状態なんだろう。
斜め下の机のただ一点を見つめて、嬉しくないわねって。うん、嬉しくないわね。これが白井夢結だ。
夏吉ゆうこさんをよろしくおねがいします
夏吉ゆうこさんをよろしくおねがいします。