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Re:ステージ!ドリームデイズ♪ 第12話の OvertuRe: を改めて鑑賞する

キラメキFutureからOvertuRe:へ

Re:ステージ!における Re が持つ意味は散々語られているように KiRaRe 各人の再出発と強い関わりがあるのかもしれません。 TVアニメ版であるRe:ステージ!ドリームデイズ♪ では多くの Re が散りばめられたそのストーリーもさることながら、 予選で利用した曲をアレンジして決勝に臨む事によって Re を体現した構成には大変魅了されました。 第7話で披露された『キラメキFuture』のアレンジとして作られた第12話の 『OvertuRe:』 によって表現されるモノは、 単に未来への希望を歌っているだけではなく、過去と向き合ったことで地に足をつけて Overture(序章)へと至れた決意であることに一貫しています。


『OvertuRe:』を知るためにはそのアレンジ元である『キラメキFuture』をある程度知っていおく必要があるのですが、 この曲はそのタイトル通りキラキラした気持ちや未来へのドキドキを歌った曲になっています。 まさに1話から7話まで積み重ねられたKiRaReの結成とプリズムステージへの高揚感がそのままストレートに曲調と歌詞に表れていて、 『OvertuRe:』 でも歌われるキミとの出会いや始まったばかりのKiRaReの未来への舗装された道が表現されています。 歌詞の所々に「夢」というフレーズが埋め込まれていることからもわかるように、ある意味まだ夢心地でその瞬間を歌った曲とも言えるでしょう


ではなぜ『OvertuRe:』が『キラメキFuture』から生まれたのか、その時に変化したものはなんだろうと考えた時には少し思考を巡らせる必要があって、 この記事では曲とその曲を使った第12話のライブシーンを中心にその差分について少し考えたいと思います。 偉そうなことを言っていますが特に公式に説明されたものではないので悪しからず。

第12話のライブシーンについて

イントロ: KiRaReの成立と過去

曲が始まる前に6人が外を向きながら円形のフォーメーションを組んでいるこの部分は謡舞踊部を一人で支えて来た市杵島瑞葉*1、 一人でアイドル活動をしてきた長谷川みい(長谷川実)、ここぱんなとしてデビューしながらも葛藤の末その想いを心に押し込めていた本城香澄、 体が弱く引きこもりがちだった柊かえ、家族の理解を得られず高尾校で単身アイドルを目指そうとしていた月坂紗由、表現は良くないですが本校からいわば逃げる形で高尾校に転校してきた式宮舞菜 の6人が抱える一人一人の決して華やかではなかった状態を読み取ることができます。


外向きの6人を真上から照らす円形のスポットライトの外側は暗闇になっています。 イントロが始まって各々がそのスポットライトの範囲外である へ向かって一歩進んだ後に、ふと何か見えない力によって引かれるように中心に引き寄せられるような動きをします。 そこでまさに6人で手を取り星型が形成されるのですが、これが KiRaRe の成立を表しているのではないかと思っています。 半ば諦めであるとか失望を抱えている状態で一歩間違えればその希望のカケラさえ無くしてしまい闇の中で進んでしまうはずだった彼女達は KiRaRe になることでその難を逃れました。 まさにイントロのフォーメーションムーブはKiRaReの結成を完全に表現しており、後々この動きはサビの歌詞によって回収されることになります。

Aメロ: 一人一人にキミが必要だった

ふいにキミが 開いたページ シナリオがまた 動き始めたんだ

舞菜が高尾校に転校してきたこと、そこには活発とは言えないが謡舞踊部という場所が存在したこと、紗由が所属していて一緒に踊ったこと、 店でたまたま流れて来たここぱんなの声と香澄の声が似ていると気がつけたこと……いくら上げても足りないですが、 偶然発生したこれらの出来事がお互いに作用してKiRaReが形作られています。 そして、少なくとも彼女たちが出会う前の鬱憤とした状態を抜け出すには自分以外の キミ の存在が重要だったことを歌っています。 自分ではなくキミがそのページを開いてくれたからシナリオが また 動き始めたと歌っているのです。 シナリオがまた動き始めたという表現がとても綺麗にその状況を表していて、全く違う人格になったんだとか、 考え方が180度変わったとかそういうことではなく、諦めかけていた夢や描いていた希望に向かってアクションを取ることができる喜びが表現されています。

サビ: イントロの回収と序章の定義

一つじゃ頼りない 小さな明かりでも 手を取り合えばほら 星座にかわってくように

イントロのフォーメーションムーブを歌詞で表現した部分がサビの冒頭になります。 振り返って一つになった6人が手を取り合うことで個々の小さな明かりが意味のある星座に変容していくことを歌っています。 頼りないとは言っていますが一人一人輝きを持っていることは間違いなく、ただそれは残念ながら一人では形になることは出来なかった事実を同時に示しています。 小さが明かりが集まった時に、単純に大きな明かりになるという表現ではなく、星座に変わるという表現を採用していることについては、 それ自体がとても美しく情報量をもった表現だなと思っており、歌詞の中でも非常に好きなフレーズです。 ただ集まっただけではなく、星座のように星と星とが結ばれて関係し合って一つの意味を持つようになります。 一人欠けてもその意味は崩れてしまい、KiRaReはこの6人がこの6人でなければいけなかったことを綺麗なフレーズの裏で強く主張しているように聞こえました。

その光 目印にして 踏み出せるよ キミとOvertuRe:

6人が集まることで形成されたKiRaReとしての大きな光、そしてきっかけをくれたキミという大きなきっかけをくれた存在としての光を心にそれぞれは新しい一歩を踏み出していくことが出来ます。 これは『キラメキFuture』で歌われているようなワクワク感とは少し毛色が異なるものであると考えることができます。 夢や未来のキラメキ自体ではなく、そこに至る第一歩を踏み出せたこと、踏み出す状態まで至れたことを意識していないとこのような表現にはならないでしょう。 曲の全体を通して言えることが、綺羅びやかな未来の状態そのものを歌と曲で表現しているのではなく準備が整った、スタートラインに立てたことを歌うことで、 その先に見える無限大の可能性を想像させる奥行きと幅広さを持たせていることです。 また、同時にこれは序章を定義することによって過去の苦しい状態と未来へ続くその道の境界線をはっきり意識させ、本当の意味での心の区切りが出来たことを意味しているとも考えられます。 映像としては 踏み出せるよ の部分で舞菜と紗由がアイコンタクトをとって微笑み合う場面が本当に素晴らしい。

Dメロ: 部長としての市杵島瑞葉

心の本棚 その奥ほう ずっと 見ないフリして隠していた

このDメロを瑞葉がセンターで堂々と歌い上げていることは涙をそそる大きなポイントになっています。 毎回メンバーを振り回す部長、なにか聞いてもその受け答えに強かさを感じる市杵島瑞葉部長は、 その反面最も自分の本心をひた隠しにしてきたと言ってよい存在です。 ミステリアスな彼女にはまだ明かされていない謎が多いですが、はっきりしているのは誰よりもKiRaReとそのメンバーのことを考えて行動していることです。


Dメロ中に差し込まれる式宮碧音を見て感じたのは、 今まで舞菜しか見えていなかった碧音が初めてKiRaReをKiRaReとして認識した瞬間であるかもしれないなということです。 そして間奏ではダメ押しかのように舞菜の展開した空間へ誘われて行きました。

間奏:

間奏始まってすぐの脚だけ移した直立小ジャンプは細かい部分ですがなにか胸に来るものがあり、 KiRaReとしての一体感を感じさせるものになっています。 その後、主人公である式宮舞菜が克服する一つの大きな存在である式宮碧音との対話が行われる。 いや対話というには舞菜からの一方的な主張ではあるのですが、KiRaReを背負って碧音と対峙し、 碧音に妹としてではなく式宮舞菜という一人の人間を意識させ、 結果として碧音に「まーちゃん」ではなく「舞菜」と言わせるに至っています*2

ラスサビ: 過去からの脱却を意味するターン

キミと出会い 動き出した 私たちのRe:ステージ!

そして最後、これまでこの記事を使って長々と言ってきたことはこの一言に集約されます。 なんと言っても最後のターンが印象的にOvertuRe:の最後を飾っています。 あの溜めと暗転は最後に過去をもう一度見つめるために用意され、 そして過去からの脱却とリスタートを切るこのターンは歌詞とともにOvertuRe:だけではなく、 Re:ステージ!そのものを端的に力強く表現しており、最後に我々視聴者にその始まりを強く印象づけています。

私たちはRe:ステージ!をやっていく

色々と飛ばしたフレーズもありますがそれぞれに魅力的な意味を含んでいます。 7話のキラメキFutureはshort ver. でこれはこれで大変素晴らしいものでしたが、 12話のOvertuRe:はフル尺を使ってそれを表現してくれたことには本当に感謝です。

Re:ステージ!ドリームデイズ♪

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Re:ステージ!プリズムステップ rst-project.com play.google.com

*1:瑞葉のReについては少し曖昧なところがあって理解しきれてないです

*2:ゲームのシナリオでの碧音の言動を考えるに全く妹離れは出来てないんですけどね